作成者別アーカイブ: 緑字斎

緑字生ズ 071 (銀の首輪をつけ)

71

銀の首輪をつけ
腹をふくらませた牝犬のいる公園で
薄い色の体をもてあました市長が
演説をはじめた
そういえば、修道尼が見当たらない

擬宇宙論:5001: 母胎としての無

母胎としての無

次元は対象を措定して初めて存在する。対象(他者)がなければ次元は存在しない。
時間も空間も、客体があってこそ設定されるのであり、自己のみの存在においてはありえない。
自己を対他とする場合には、次元をもつ場合もある。それは自己のペアとしての反物質の分離から生まれるのかもしれない。

無は有を含んでいる、すべての情報を蔽って無なのだ。
この無から粒子-反粒子が生成されるので、粒子ペアにはすべての要素=情報が含まれ、このすべての要素が幾何級数的に連続して瞬時に分離することで、爆発的なビッグバンとなるのだろうか。

また無は複数存在なのか。
あるいは無は別の無を包含できるのか。
無は無の入れ子となりうるのか。

2008/03/14

旧作:20030605: 画家になる少女

画家になる少女
  ――初めての個展で

水に溶ける
絵の束を抱えた 少女が
ふりはじめた雨足に
逐われている

街の灯が乱反射する時刻
建物の壁に貼りつく人々

おい、ここだ、ここだ

少女の描いた 鋭い曲線が
やはり 刃物のように囁く
おい、ここだ、ここだ

たったいま走り出た
画廊の 余熱が
全身に満たされている

わたしは絵を描くためにのみ
生きているのだ

少女の性急な想いが
雨に濡らすまいと その
細い腕に力を伝える

ひとりの画家が
生まれたのかもしれない

[作成時期]2003/06/05 [改訂] 2015.2

緑字生ズ 070 (サルボウガイよ)

70

サルボウガイよ
錨は永遠に錆ついている
菫色の小宇宙よ
星々の間が広がっているというのは
光の屈折による誤解だ

緑字生ズ 069 (街外れで)

69

街外れで
隊商の列を幻想した
ミイラの顔した男たちに
どこまで行くのかと訊ねる
膝まである布をまとった男たちは
黙って通り過ぎた
悪魔がいるから待ちなさいと呼んだが
悪魔がいるから死んじまえという耳鳴り