魔の満月 詩篇「楽天地」(栄光は薄暗い小部屋の中で……)

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紙鉄砲を鳴らしていた少年の顔が蒼白の卵に変じつづいてべりっと破られる
光を浴びた魔鏡ががらくたの中で死せる海を映す
精神病院とは楽しき鏡張の迷路である
そしてダイヤモンドが金髪の乙女を閉じ込める
密室はどの岩棚に匿されているのだろう
至る所で御婦人連中が鍵束の伝説に怯えている
切妻破風とは封印の一角を毀す不吉な呪詛である
屋敷は帆船に曳れて花散る岩窟に塞されてしまう
飴色の光茫を帯びた船は清涼な追風を受け何処へともなく流される
南極も夜
北極も夜
世界の透明な白夜
ジェット・コースターは銀色の車体を燦かせ遠い異国へと旅立っているだろうか
王冠の飛沫をあげ真白な波のモザイクにみられる断裁
寺院を中心に放射状に拡がる町はいかなる栄光の星を抱いているのだろう
煮込みの美味さは下呂と唐辛子の比率に求められる
劇場や寄席を擁する天下一品のワンダー・ランドは今や閑古鳥の楽園である
朝の氷の胸板で帝王切離の航路を往く船はことごとく生気を吸われ青い暗礁に至ってどんな夢をみるのだろう
びっくり箱を覗いて子供たちの眼はガラス玉に変る
正装の夫婦がウォツカの栓を抜く
洋灯は蛇に転身する
おお貞操の女神ディアーナよ
根太は航海術よりいっそう巧みにゆるんだ襞を押し拡げる
舌が黄色の酸液にまみれてゆく
船室を結ぶ通廊は甲板からはみでた静脈の分岐である
おお凍結の寸秒に酔う
ナイルの鷹を肩に侍らせ少年たちは猛獣狩りに明け暮れる

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