孤島 (実験詩集「浣腸遊び」, 1974)

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突然 浅間山の頂点に大きな日没がくる
なにものかが森をつくり
谷の口をおしひろげ
寒冷な空気をひき裂く
  田村隆一「見えない木」より

 
 
 I
冬枯れ
濡れそぼる眼の窪みに
妖しく 瞠く
――おれは、畢竟、単独のエロス。
鼓膜を枝枝に吊り 月の孔に
葺かれる しとど
垂れる林道のふるい雨
森の水晶体・ひかり苔に拡がる 黄色い
呼気 潮の
撞き声に枯れる雪
――分光器から覗くと、枠寄せる火の繊維が括られ……。
弓なりの意志の一輪ざし
放物線のしぶく 波の

反動する波間にひき裂く 轟音
どこからの
浮游魂の毛一筋――

真向いからの夕餉
仄立つ白魚の活け
のぼり夢の切れ目
暮れかけの灰色の孤島へ
星を渉る樹林を
冠れよ――もう停まらぬのだよ
緋傘に
貼りつむ指の透明 うす髪の
淫らな絡め その

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