旧作:197403: 魔の満月 第二部(習作)

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〈調教〉
木喰鳥。洗濯板の羽根。ある種の光学現象が、首を絞めつける渦紋が、円形の数枚の花びらが、樹木について放射する、逆しまの海。青い呼吸器。音楽会の迷路、ひらひら肉質の薄膜が明るみを閉ざす。火っ淵。不眠症の文句。またあるときには
            その形象がいりみだれて
            ぼくらのまえにあらわれる。右目。左目。両眼の交叉。青い屍。赤い熱病。うっすら拡がる黄色人種の大陸。緩慢な海を分けて、病的な蒸気機関車が加速する。明け方の彼方とともに、影の遊離体が滲み出ている。白い背。女どもの素足。路地におとされる歯跡。このとき炎症を起こしている町はなかなか
                             生きてくれ
                             ない死んで
                             くれない。
犯罪者。繊維。骨を包み込んだ卵の殻。出口。脂肪が深い河をつくっている。ネガのように透明な男色家。歪んだ空のへりをめくると、棘ばかり。貌の痕。射程距離。同心円の鳥どもが一目散に転がる。〈命名者〉はひっそりへばりつく、布地のような植物群に。焼け爛れる砂地に。予感にあふれる群青の波。いびつな乳房。
  よそみをしていると
  その事情がまるで
  よそごとのこととなっては。蝕み。蜜。樹々を縫って通り過ぎる亡霊。数億年の眼。一瞬の朝。虚ろに向いた地底の、あふれる空のへりをめくると、棘ばかりが流れる河がある。選別。寝室に、にぶく。火山弾。めくるめく、即興曲、画布、扉。押し寄せる血の激しい匂い、春のあとどりへ向けて。帽子。しぐさ。複数の船員。硝煙。挑撥する気流。ある種の海図。その靄からたちのぼる紡錘状の旋律である。腥い精力。ふたつに割れる乳輪。港が勃起する。から匂っている。うらがえしている。歴史が、焚火が、はしるが。水の浸蝕がはげしい。賊が、宝が、薬物が、知られてはいないが、鮫の尾が。滴る行手。なだらかな軌道に沿って、にぶい。窓枠の中央から迸る冬景色。銅貨、幅広の。脚のくりかえし。単純な、周囲。双発機が記号化され、洗礼の構成。定着、切り抜き、恨み言。生命体の裏側に訪れる、呼吸。液体。性質。最後の永遠が擦り抜け、妖しい呪文。なにげない朝ばかり。肥沃な、反吐。軽快な霜柱の長蛇が映し出す、鏡の匙。粉々に男根が砕けている。曲線の日に焼ける飢え。大股びらきの館には、リズミカルな出没の儀がある。火の向こうには、教唆が。薄暗いいくつもの卵。骨を包み込んだその殻が流れ始める。一把みの夜が、濃い。朝が、始まる。朝が抜け出してくる、朝ばかりの朝。睡りばかりの畑、不眠症の都市、黄金海岸。押しやられる年輪は〈ついに一条の螺旋でしかない〉。夜は波。駈ける。潜める。すでに、沈まっている、ついに一箇の頭脳!

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