旧作:197403: 魔の満月 第二部(習作)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

〈註解〉
木喰鳥。面影のうちに種属もなし、調理人の厚いまなざしもなく、ゆききする書物の記名が靡いている。
洗濯板の羽根。乾いた細いしがらみに透き通る幼時の幻覚が、銀紙に包まれた祭の記載事項に該当するはずはなく。
ある種の光学現象が、首を絞めつける渦紋が円形の数枚の花びらが樹木について放射する逆しまの海。
青い呼吸器。拡がる沈静に、たとえば硝子張りの字引とか、棲家を失った羽虫とかが、無尽蔵に捕われているとして。
音楽会の迷路。木賃宿で世直しの陰謀を計り口惜しき身の所在を、蝋燭の丈さにおいたりして、耳を削ぎおとす。
ひらひら肉質の薄膜が明るみを閉ざす。火っ淵。鎖をインク壷に漬け、夜啼きの烏を描き出すと、深夜の表情がかっと凝固をはじめている。
不眠症の決まり文句。またあるときには、その形象がいりみだれてぼくらのまえにあらわれる。
右目(青い屍)。左目(赤い熱病)。両眼の交叉(黄色人種の大陸)。刻々と、冷え込みのうちに裸にされている女どもが、まっ先に読み出されてゆく。
緩慢な海を分けて、病的な蒸気機関車が加速する。明け方の彼方とともには、影からの遊離体が滲み出ている。
白い背。靴跡を収めた柱時計が、酸化を始める文字の並びのうちに帰路を示していると、そこからは跳ねながら火傷のやってくる。
女どもの素足。雑音が物忘れのように耳朶を叩く。まる三日の間、食物は食べられることを放棄する。
路地におとされる歯跡。折れ曲った体から尿のように噴きでる夢。遺失物係の案内で壁のなかに半年もの。
このとき炎症を起こしている町はなかなか、生きてくれない、死んでくれない。
犯罪者。仰向けに寝床が待っている。星々の移動が突発的な予定調和をやってのける。鉱泉に、やがて映写されているものは。
繊維。くろぐろと珠玉が、語が、爪が伸びだしている。また昼間には到底味合えない金属の流動色が澱んでいる。
骨を包み込んだ卵の殻。みどりの。王制復古の名残り惜し気な精神病棟。砂浜には五色の欲望が。
出口。とりとめのない語り口で神々は深く弔われ、高層建築の吐きだす、細工法。毛が刈り取られている。
脂肪が深い河をつくっている。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11