(東風1989)

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梅雨が明けない リウマチ体質なので
つらい季節 しかし、すぐ夏
粗い刃で内部に深く食い込む
人民の海は広く深い

楽観主義が胸のうちに涌き上がる
しだいに暗くなり 初めての路を
歩くせいだが 徘徊するのが
好きなことも

裏道に踏み込んで
その違和感が 乾いた画面を作って
幼馴染みは 永遠に知りえないのか
確かめたくて

取り返しのつかない機会を あの時代は
絶望でもなく 貧しさを貧しさと感じず
不潔どころか 赤痢が発生しても清潔で
どこにもなくなったあの匂い

懐かしいものも アンナ・カリーナも
湿ったイメージはない 拷問シーンも
虚無的な現実を かわいた知性の
ことばで切り裂くと

ストーリーと演技の解体が 事物が
かさなって進行し 立体的で
不思議な重層感を 自由市場の
片づけられた屋台の跡で

いくつも転がる馬桶 野菜屑
ぽつんと点った裸電球 暗い路地の陰で
うとうとしている年寄り 疲れきって
道端でのびている 汚れきって

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