[資料] 天安門事件: 事件直前の記事等の翻訳[03] (佐丸寛人・訳)

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(『光明日報』1989.5.15 [中青年哲学家掠影]「王鵬令」より要約。翻訳: 佐丸寛人)

現在の中国に於ける文化選択を論ず――五四運動70周年を記念して(後)
 社会科学院哲学研究所 王鵬令/訳者・佐丸寛人

 マルクス主義の古典的形式と伝統的形式を止揚し、現代的マルクス主義を創造するには、総体的に言って、当然まず主題の転換を実現しなければならない。即ちマルクス主義の主題を、階級闘争とプロレタリヤ革命から、平和と発展及びそれに相応する社会主義現代化建設に転換しなければならない。しかし、問題は、現代的マルクス主義の哲学が集中的に体現してみせる基本的文化精神とは、とどのつまりどんなものであるべきなのか、という所にある。私は、現代的マルクス主義哲学が体現すべきところの基本的文化精神とは、形式理性の力を借りて自分が内包するものを豊かにする科学的理性と人道主義との統一でなければならない、と思う。
 誰もが知っているように、人々は通常、主としてマルクス主義哲学を科学として扱う。即ち、主としてその科学的意味から理解し把握する。この伝統的観点に従えば、マルクス主義の指導下に建設された文化の基本的精神は、疑いなく科学的理性であることになる。私は、このような概括は一面的であり、偏向さえしていると思う。というのは、マルクス主義は共産主義の思想体系であるが、共産主義とは社会歴史発展の必然的趨勢であるのみならず、プロレタリヤの合目的的な社会運動でもあり、プロレタリヤの最高理想或は最高価値の追求を凝集させ体現しているものだからでもある。この後者の一面を、「科学的理性」で完全に覆いつくすことができないのは明らかである。
 社会主義と共産主義は、唯物主義をその哲学的基礎とするものである。しかし、ここで言うところの唯物主義とは、唯物主義のあらゆる形式を指すものではない。それは、現存資本主義制度を批判する現実の社会運動として、最初からある特殊な唯物主義と密接な関係にあったものである。この特殊な唯物主義が、即ち英国のロックに起源し、並びに当時のフランスの教養ある階層によって「文明化」された唯物主義なのである。その特徴は、人の性はもともと善で、人々は知力に於いて平等であると見なし、経験と慣習を重視し、外部環境の人に対する影響と教育の万能を強調し、この他、工業の重要意義を強調し、並びに享楽の合理性を承認する、等々である。正にマルクスが言うところの、この「人道主義と符合した唯物主義」の学説は、「共産主義や社会主義との間に必然的な関係があり」、並びに直接に社会主義や共産主義を導くものである(『馬克思・恩格斯 全集』第2巻p.166 )。

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