魔の満月 0(憧れて風雪数千年の都市に至ってみれば……)

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砂漠には王侯の同盟軍が到着している
闇には禿鷹も就眠する
こんもりと土壌は隆起しながら出産は始まる
宗教史家や数学者 獣医律法者や地理研究者とりわけ天文学者や産婆 戦略家 植物図鑑の著者や紋章学の先達 錬金術士 遺伝学者また風土記編纂家 園芸家それらの長たる力学者 地質学者 設計家 医者 統計屋 生物学博士 系図学者さらには黒魔術の道士 光学器械の技術者 曲芸団の親方それから語学に精通している学匠派司祭 海洋博物館長それに物理学者 手品師 預言者 通訳そして参謀司令官が聖十字の怯懦きょうだに付き添っている
この崇高なる崖ははたして無痛分娩となろうか
人身売買は法制化される
カシオペア座の幾何学的な鶏姦は探検家たちの主要な椅子である
おお銀箔の海賊船
植物採集者の掌にはピラミッドの侵入経路が彫り込まれている
手首は首狩族の神格だ
象牙色の壁に吊られた渚の水彩画から迸る洪水によって その部屋の時間が碧の化粧をすることはないだろう
欲望に屹立する海蝕の尖塔
白鳥の群れる岩
船着き場では荒くれどもの唄声が太陽を串刺しにしている
眼を剥き出しにしているエルドレよ
純白の雪どもを裏切りながら圧倒するほどの極地の希望は何処の永遠に処せられているのであろう
その乗物は不思議な微光に取り巻かれている透明な容器である
彼は六芒星の中心部に円く拡がっている人工の平原に突入する瞬間に これほどの憎悪 それも偏執的なある謀みを完璧な静寂によって示しているこの純白なる基地を一望に捉えている 全身は今や最後の圧力にひしがれ硬直している
そのまま真っ白な闇へ埋もれてゆくのである
数時間の経過が絶望の深い睡りから頭を擡げ ついにはそこからエルドレを引き上げ徐々に彼の躯を癒していく
ああ この新鮮な冷気を鼻孔に膨らませて最初の挨拶を六種の木霊の相乗し共鳴し合う中心点で送っているのは もう とうに雪に埋もれたフネを惜し気もなく見限ってしまった異郷の訪問者なのだ

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