魔の満月 i – 1(岩窟に刻まれた扉は……)

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この光景に魅せられいたく感動したオルリー公は堰を切った情欲の虜となって 長い鞭のような舌をもつ犬どもと黒人とを相手に自分に課せられた儀式の一齣を存分に堪能する
ひと通りの悦楽が頂上に達しようとすると ボウの苑の最もぼんやりと霞んでいる場所からエレクトラム製の耳輪をつけたアンドロギュヌスのテラコッタが引き出される
人々はその台座の周囲に拝跪し特殊な振動数で作曲された讃美歌を唱う
ラドルの全貌が共鳴し 人々とボウの音楽が神聖な調和を生み 聖地の輝かしき秘法が純白の像の謎の箇所を唯一の輪廻へと結びつけるのである
あの若い王妃 白い腕のひときわ美しい巫女は人々にエレアと称ばれている
おおエレーア
エルドレは暗箱の冷えた洞窟の中で叫ぶ
その声のぶつかる向うから水晶のように燦く人物がまた叫びながらエルドレの方に駈け寄ってくる
かくして邂逅は異郷の地でなされるのであろうか
呪われた恋人たちは今や相手の躯に触れんばかりである
おお 悪夢はどのような精神作用の変化を促すのだろう
恋人たちがともに相抱こうとする寸前 胸と胸との間には非情な壁がきって落とされる
厚みのない極度に硬く氷のように凍結し透き通った壁
エルドレは硝子を通した向うに貼りつき絶望の眼を見開いている人物がエレアではなく エレアにそっくりの それも女ではなく男であることに気がつかねばならない

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