連載: 散文詩による小説: Dance Obscura

連載: 散文詩による小説: Dance Obscura

紙田 彰(Akira Kamita)

この小説は、散文詩をベースにした小説である。宇宙論哲学という思考を展開することで成立している。
これが、現象と刺激に過ぎないというもはや終焉を示しているこの惑星とここの生命体に何を迫っているのかを、よくよく考える必要があるのかもしれない。
自分の頭で考え、自分の肉体で生きていくのだ。それ以外に何があろうか。
踊れ、躍れよ、髑髏の棲まう暗黒の函の渦中で。

■目次

連載【第001回】
Invisible 1(2019/03/07)

連載【第002回】
Invisible 2(2019/03/09)

連載【第003回】
Invisible 3(2019/03/10)

連載【第004回】
microtubule 1(2019/03/12)

連載【第005回】
microtubule 2(2019/03/13)

連載【第006回】
pain speed(2019/03/15)

連載【第007回】
breath melts 1(2019/03/17)

連載【第008回】
breath melts 2(2019/03/19)

連載【第009回】
darkness 1(2019/03/21)

連載【第010回】
darkness 2(2019/03/22)

連載【第011回】
internal trees 1(2019/03/24)

連載【第012回】
internal trees 2(2019/03/26)

連載【第013回】
internal trees 3(2019/03/28)

連載【第014回】
flat living 1(2019/03/29)

連載【第015回】
flat living 2(2019/03/31)

連載【第016回】
flat living 3(2019/04/02)

連載【第017回】
blood wedding 1(2019/04/04)

連載【第018回】
blood wedding 2(2019/04/06)

連載【第019回】
all gravity 1(2019/04/07)

連載【第020回】
all gravity 2(2019/04/09)

連載【第021回】
missing acts 1(2019/04/12)

連載【第022回】
missing acts 2(2019/04/14)

連載【第023回】
narrative of revenant 1(2019/04/16)

連載【第024回】
narrative of revenant 2(2019/04/18)

連載【第025回】
narrative of revenant 3(2019/04/20)

連載【第026回】
fluctuating fabric 1(2019/04/22)

連載【第027回】
fluctuating fabric 2(2019/04/24)

連載【第028回】
grillo 1(2019/04/26)

連載【第029回】
grillo 2(2019/04/28)

連載【第030回】
light cage(2019/04/30)

連載【第031回】
fascism without the summit(2019/05/01)

連載【第032回】
bourbon cask(2019/05/04)

連載【第033回】
spinning sea 1(2019/05/06)

連載【第034回】
spinning sea 2(2019/05/09)

連載【第035回】
sleepless forest 1(2019/05/11)

連載【第036回】
sleepless forest 2(2019/05/13)

連載【第037回】
sleepless forest 3(2019/05/15)

連載【第038回】
sleepless forest 4(2019/05/17)

連載【第039回】
life genes 1(2019/05/19)

連載【第040回】
life genes 2(2019/05/21)

連載【第041回】
life genes 3(2019/05/23)
 

29篇の小宇宙  緑字斎(Ryokujisai)

 書物の中には何もないはずなのに、あることとないこととの区別のつかない混乱が生じている。それは深い海の底での出来事のようでもあり、ビッグバン宇宙の発生する寸前の渦中のことでもある。ものの始まりが物質であるのか思考のような形の定まらないエネルギーであるのかは分からない。しかし、それらがもがくさまは極小宇宙を産み出す苦しみに充ちている。研ぎ澄まされた作品の破片が産まれていくように。

 ここにある作品はそれぞれの破片であり、波紋である。それは母なる海における渦のひとつの現れであり、宇宙においては物質を構成する無数の要素そのものである。
 遠く離れた要素が重なり合い、まるで無関係なものが結びつき、プラズマ状態の中で、重力の源がいつのまにか呼応する物質の始まりを産み出していく。解体と混乱、さらなる解体。そのようにして、何かが増殖していく。

 織物は、存在論、宇宙論、細胞、疾病、癌、次元、……
 ここに収められた文章はそれ自身が単一の詩篇であり、物語の核であり、思考の誕生する不可視の闇の世界である。粒子と反粒子がせめぎ合う、存在と反存在の事件の始まりを指示する場所なのだ。思考と暗黒物質による織物が、混乱の加速度的な運動によって、プラズマという光の凝集体となる。
 それを支えるのは、かつてどこにもなかったといわれる、想像力と創造の冒険が紡ぐ糸だけなのだ。
 私には、ブルトンやブランショ、マルケスの切り拓いた創造と実験、冒険に溢れた作品行為に触発されていたこともあって、思考という事件だけが問題なのであって、事実だとか、関係性だとか、整合性などに拘泥する必要もなく、世界性を獲得するという方法だけを目指したのだ。

 細胞分裂のように、インフレーション爆発のように、重力の拡散のように、あらゆる事象は繋がりを断ち切り、それぞれの思考だけを紡ぎ、それ自体を語り始める。それはまるでなんの関連性もなく、勝手気ままに、自分だけの夢を泳いでいるのだ。
 しかし、それらの方向性もなく、繋がりもなく、目的も、真実とか嘘であるとか、合理性のあるなし、科学か神秘主義かなどの議論とは無関係に、その虚像と実像が世界であり、宇宙なのである。
 それでも、細分化したグラビトンのように、思考もいつか結びついていくことがあるとすれば、でたらめのように発生し続ける妄想が、いつか現実という文明を凌駕することがあるかもしれない。
 まして、ここにあるのは科学ではない。擬似科学という創作物だ。

 *思考の断片は、否定概念、類似、近似、発展、後戻り、無関係、結合、同化、相互消滅、重なり合い、吸着などを繰り返し、連合とか連続、共有、……そして、思考の全体
 このことは本作品集全体にもあてはまる。
 いつのまにか、小宇宙はそれぞれひきつけ合い、関係−反関係する物語群を作っていく。そして、さらに大きな作品の規模で物語へと結合していくのである。