緑字生ズ 157 (その壁画は)

緑字生ズ 157 (その壁画は)

157

その壁画は
アカンサスの葉飾りのある
alumi-sashで囲まれているのだが
室内で交接する若者の多くは
見つめられていることに気づかない
肉体が外され
何かの拍子で陰毛に火がつくと
めらめら火焔となって
傍らの、緑のカーテンが灰になる
それこそ眼の間の出来事なので
「金属せよ! フリージアの潤め」
という題の自然主義的景色が
くにゃりと瓦灯窓から顔を出す

Large Work 02: Occurrence of liberating impulse

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Large Work 01: D-brane

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緑字生ズ 154 舷梯ギャングウェイを跳び降り、……)

154

舷梯ギャングウェイを跳び降り、夏の空は眩しい
マドロス帽をあみだにかぶり
村外れの崩れた壁を背に
女を抱き寄せる
日盛りと杜松の匂い
一口放り込んでから
広い、埃っぽい道を歩いてゆくと
深い酩酊にとらわれる
小色のひとつふたつなどと口ずさみ
糸杉のある墓地のあたりで
片目をおさえる飛燕草
雨水のはけ口で足をとられた
日曜だけの恋人の、青い肩
毛の薄いあらゆる感性なんてまっぴらと
意味ありげな含み笑い
かどわかされたうわばみと
粘液のような生物の男根
ゆるやかな起伏がつづき
オリーブと葡萄の畑が
永遠をめがけて広がる

この島から盗むべきものは
谷でへだてられた向こうの丘の
収穫者の杯という、凍る石

緑字生ズ 153 (人台の前で……)

153

人台の前で尾を置き忘れた両棲類 梟のように頬をふくらませた男の死亡通知 女の躯をつたう男の汗が闇に光る ひそひそ話と私服のメモ 奴と義兄弟のつもりになるな 遺されたこもごもを理解するな ふん、ホウセンカの種め 行先を告げず、にたにた笑う運転手など糞啖え 紙幣を奪取し細かく破り捨てると、紙吹雪がひとつひとつ義眼となって首の直前で剃刀となる おお、ぴかりと閉じた子供時代、雪景色にさよならだ 男は梅雨の到来に痩せほそる

緑字生ズ 152 (猫の耳と称ばれる)

152

猫の耳と称ばれる
ヒマラヤ杉の下蔭から
玄関プロピレイアに入ると
股間の化粧を終えた少女が
単眼巨人との死闘を演じていた

尖った苦みが走ったので
虫の涌いた布で口を拭うと
折れた蟹の赤い爪
さしだされた花びらを齧る

光る甲、かかとまでの汗
横恋慕ではないが
そむけられた横顔、そのときだけの義眼
少女の付け根の血に、思わず息を

じりじりと燃えつきる踊り
じりじりと燃えつきる踊り
油を絞る畸型の時間……

緑字生ズ 151 (寝息をまねて脈をとる)

151

寝息をまねて脈をとる
顔のない顔
その皺の中を躯が流れる
交わりではなく
弔いでもなく
呪いと愛ですらない
風も耳も鼻も、ロさえもなく
六本の足、四枚の翼、
黄色い布袋の姿が
赤い炎になる
狼でなく
牛でもなく
ヴィニエットの中に棲む

思いつめないで!
口笛吹いて
いま扉を開くと
眼に映る眼の毒、ごろごろの魂、結ぼれざる涙
ああ、無意味なることの子供たち

緑字生ズ 150 (倒立した円錐図形)

150

倒立した円錐図形
シャクナグの可憐な綱渡り
秋篠寺の黒い石が汗をかいているので
地獄の軸を昇って
雷除土器が
眼の穴から盗まれるに違いない
察するところ
はるけきオリンピアでは
パンクラティオンの凝灰岩が
ゆるく波打つとともに
徐々に液体化して
白昼、群衆をひきずり込む